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2024.04.05 水素と触媒反応を利用して低接触抵抗IGZO-TFTを実現

研究トピックス

2024.04.05 水素と触媒反応を利用して低接触抵抗IGZO-TFTを実現

東京工業大学 国際先駆研究機構 元素戦略MDX研究センターの辻昌武特任助教、Shi Yuhao(施宇豪)大学院生、細野秀雄特命教授らの研究チームは、IGZO-TFTの電極に触媒金属を用いることで電極界面が選択的に還元されることを見出し、IGZO-TFTの安定性を維持したまま接触抵抗を約3桁低減させることに成功した。

当研究グループが以前の研究で開発したアモルファス酸化物半導体InGaZnOxのトランジスタ(IGZO-TFT)は、室温で作製が可能で、アモルファスシリコンの数十倍の移動度を示すことから、フラットパネルディスプレイ(FPD)に広く使われている。さらに近年、オフ電流とプロセス温度の低さから、次世代のキャパシタが不要なメモリデバイス向けへの応用が有望視されている。しかし高密度に集積されたnmスケールのTFTには、金属・半導体界面の接触抵抗がデバイス駆動の大きな障壁となるという、FPD用TFTにない問題がある。一方で、従来のプラズマを用いた処理方法は表面にのみしか適用できないため、複雑に積層されたデバイスの内部界面の接触抵抗を改善する技術的なアプローチが求められている。

今回の研究では電極として、高い水素透過能を有し、かつ水素分子を解離する触媒金属であるパラジウム(Pd)を用いた。デバイス外部から内部界面へ高活性な原子状水素を輸送して界面を効率的に還元し、金属中間層を生成することで、低接触抵抗(6.1 Ω·cm) IGZO-TFTを実現した。また今回開発した手法は、界面近傍のみを選択的に反応させることが可能なため、チャネル層へのダメージを防ぐことができる。そのためデバイスの安定性を維持したまま、低接触抵抗に加えて、副次的に材料本来の高電界効果移動度が得られることも特徴である。

本研究成果は、3月22日(現地時間)に米国科学誌「ACS Nano」にオンライン掲載された。

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